見どころ
欧州勢優位もエリ女ワンツー牝馬が参戦
香港ヴァーズは歴史的に欧州勢が強く、G1昇格後の18回でフランス調教馬が7勝、英国調教馬が5勝を挙げている。今年もフランスから参戦するヴァルトガイストを優勝候補の筆頭に推す声が大きい。
ヴァルトガイストといえば、フォワ賞で日本のクリンチャーらを一蹴した強烈な末脚が印象的だが、次戦の凱旋門賞ではその武器を存分に生かせない形になり、それでも最強牝馬エネイブルから1馬身半差ほどの4着。そんな結果を残せる馬が世界に何頭いるかと想像すれば、香港ヴァーズの主役は自ずとヴァルトガイストに落ち着くだろう。前走のBCターフも道悪に見舞われるなど、ここ2戦は不本意なレースが続いているが、管理の行き届いたシャティン競馬場の芝なら少々の雨が降ろうと問題はない。良馬場なら言わずもがなで、直線はパリロンシャン競馬場より約100m短いが、430mあれば自慢の末脚を発揮できそうだ。
レーティング120で続くのは地元の雄パキスタンスター。香港ヴァーズで苦戦中の地元馬が、これほどの高いレーティング評価で本番を迎えることは珍しい。近3走はチグハグな内容が続いているが、今回は気性難での低迷から劇的な復活とG1初制覇を果たしたクイーンエリザベス2世C以来、久々にW.ビュイック騎手とのコンビが復活。先行する脚もあり、大物撃破なるかは見ものだ。
レーティング3番手から優勝をうかがうのは、G1愛ダービーでワンツーのラトローブとロストロポーヴィチ。両馬とも距離を延ばすとともに台頭してきたステイヤーで、今回は豪州滞在を経ての参戦となるが、同じアイルランド調教馬ではハイランドリールも3歳時に豪州経由で香港ヴァーズを制している。2頭の比較では愛ダービーで先着し、前走も2000mの豪G1で出遅れながら少差の2着とスピードも見せたラトローブがやや優勢か。
エリザベス女王杯を制したリスグラシューにとっては、初の海外遠征でオークス以来の2400m、さらに牡馬が相手と超えるべき壁は多い。しかし、香港を熟知している“マジックマン”J.モレイラ騎手とのコンビが香港ヴァーズでも継続することは、リスグラシューにとって何よりの朗報。成長し続けた1年の真価を問われる一戦となる。
もう1頭の牝馬クロコスミアは5歳終盤に差し掛かったが、時計や着差の比較でも衰えどころか成長さえ感じさせている。レーティングで同格のエグザルタントはチャンピオンズ&チャターCでパキスタンスターの2着に逃げ粘っており、得意の形に持ち込みたい。
国別の優勝回数でフランスに次ぐ英国のサルウィンは、リスグラシューと同格のレーティングでも優勝争いに絡んでくるかもしれない不気味な1頭。6月のコロネーションCではクラックスマンを苦しめてアタマ差の2着とG1制覇に手を掛けた。他にもメルボルンCで3着をはじめ近走の内容が良いプリンスオブアランや、今季G1レース3勝のベストソリューションを相手に英G2プリンセスオブウェールズSで1/2馬身差の接戦を演じたミラージュダンサーら伏兵陣は多彩だ。