見どころ
地元のエグザルタントが優勢、打倒には日本最強クラスの能力が必要
香港の中長距離路線はスプリントやマイルほどの支配力がなく、海外の遠征馬に攻勢を受けてきた歴史がある。とりわけ地元馬は2400mの香港ヴァーズで苦戦を強いられてきたが、ついにタイトル防衛を任せられる逸材が現れた。このレースの連覇を狙うエグザルタントの充実ぶりは、管理するA.クルーズ調教師も香港史上最強のステイヤーと認める域に達している。
エグザルタントの実力を量る上で最も分かりやすい物差しが日本のリスグラシューだ。昨年の香港ヴァーズ、今年4月のクイーンエリザベス2世カップ(QE2C)でともにエグザルタントが競り勝ち、リスグラシューに先着している。次戦から宝塚記念と豪州のコックスプレートを連勝し、今や日本最強クラスの1頭を抑え込んだ実力には一目置かざるを得ない。QE2Cではリスグラシューに先着する一方、ウインブライトに3/4馬身及ばなかったが、枠順が逆なら勝てたというのが陣営の評価。自信は相当だ。
日本からは3度目の香港となるディアドラ、前走で鮮やかに復活を遂げたラッキーライラック、ステイヤーの有望株グローリーヴェイズと楽しみなメンバーがそろった。この中でディアドラにはQE2Cでエグザルタントとの対戦経験がある。当時は直線入り口の接近状態から3馬身余り差を広げられたものの、今となっては状態がひと息だった可能性も。英国滞在の夏場以降に見せた末脚の威力こそ本来のものだ。実績のない2400mは課題だが、歴史的に欧州勢が強い香港ヴァーズで“留学経験”が生きる可能性もあるだろう。
また、ラッキーライラックはエリザベス女王杯勝ちからの臨戦が昨年のリスグラシューと同じ。前走で披露した強烈な瞬発力で、併せ馬に強いエグザルタントを並ぶことなく抜き去る形に持ち込みたい。一方、グローリーヴェイズの勝負パターンはエグザルタントに近い印象。真っ向勝負を挑むには実績が不足しているが、本命馬の作る流れが向く可能性はあり、大駆けの魅力を秘めている。
このレースに強い欧州勢では、やはり英ダービー馬のアンソニーヴァンダイクが筆頭だろう。同馬のA.オブライエン調教師はハイランドリールが3歳の2015年から3年連続で香港ヴァーズに送り込み、2勝、2着1回の実績を残している。同時期の比較ではアンソニーヴァンダイクの実績が明らかに上回っており、ここを勝てるだけの力は備えているはず。また、前走のブリーダーズカップターフに続き僚馬マウントエベレストも遠征するが、当時は出遅れてアンソニーヴァンダイクから1馬身少々の6着。2歳時には重賞でジャパンと競り合っての2着もある。その後に1年を棒に振って重賞未勝利の身だが、母はG1レース3勝の名牝シックスパーフェクションズと血統的なスケールも大きく侮れない。
前走でG1オイロパ賞勝ちのアスペターも勝ち負けに絡んで不思議のない存在。昨年は重賞1戦(8着)のみだったが、4歳を迎えた今季は充実著しい。4月の初戦から5戦しかしておらず、前走も約3か月ぶりのレースで疲労の心配は無用。通算4勝のうち3勝は良馬場と香港の適性も感じさせる。また、昨年は英ダービー戦線で人気を集め、重賞を3勝したヤングラスカルも要注意。今年は初戦から集中力を欠いて夏場に去勢され、復帰戦の前走で一変の走りを見せた。
その他の欧州勢ではコールドトゥザバーに豊富な重賞実績があるが、1年余りにわたって3000m以上のレースに出走しており、高速化が進む現在のシャティン競馬場に対応できるか。プリンスオブアランは前走のメルボルンカップで2着(3位から繰り上げ)だが、同3着から臨んだ昨年の香港ヴァーズでは8着だった。この辺りの欧州勢なら、昨年4着で2400mでは安定感がある地元のイーグルウェイも引けは取らない。