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現役世界最高レーティングのスプリンター・クラシックレジェンド。(Photo by Getty Images)

クラシックレジェンドの実力や如何に? 不発なら日本勢にチャンスも

歴史的に地元馬が強い香港スプリントだが、今年は例年と比較して様相が少々異なっている。豪州で活躍した現役世界最高レーティングのスプリンター・クラシックレジェンドが香港に電撃移籍して参戦。勝負の行方を左右する存在となった。

この香港スプリントでG1初出走となるクラシックレジェンドだが、レーティングに現れている通り、すでに秀でた能力を証明済み。前走のジ・エベレストはG1格付けがないだけで、G1ホース7頭を含む強力なメンバー構成だった。そうした相手を後方から一網打尽に差し切って2.5馬身突き抜けたのだから“世界一”の評価もうなずける。しかも、G1未勝利ゆえに格下扱いされ、ノーマークの大駆けだった訳ではなく、1番人気と戦前から実力を認められていた中での順当勝ち。昨年の香港スプリントで人気を集めたエセロを半弟に持つ血統も筋が通っており、ジ・エベレストの走りを再現されたら対抗するのはなかなか難しい。

ただし、今回は2か月ぶりの実戦かつ移籍初戦。香港には1か月前に到着し、それ以前は検疫で乗り込みが不足していた。限られた時間の中で、陣営に手探りの面も少なくないはず。状況は豪州調教馬が初の海外遠征に臨むのと大差なく、豪州調教馬に置き換えればG1昇格後に香港スプリントを勝った事実もない。主戦のK.マカヴォイ騎手がコロナ禍の移動制限により騎乗を断念したのも割引材料で、今回ばかりはつけ入る隙もありそうだ。

レーティングでクラシックレジェンドに次ぐのは地元馬のホットキングプローン。3番手のビッグタイムベイビーとヴォイッジウォリアーに5ポンド差をつけ、地元勢の中では頭ひとつ抜けている。短距離戦が盛んでレース数も多い香港では、同じようなメンバーが対戦を繰り返すためレーティングの信頼性は比較的高い。ホットキングプローンの脚質は先行主体に自在性もあり、クラシックレジェンドの末脚が不発なら取って代われる位置にいる。

今年の出走馬で唯一G1勝ちがあるタワーオブロンドン。(Photo by Kazuhiro Kuramoto)

ぶ厚い香港勢の壁に当たり続けている日本調教馬だが、今年は例年よりチャンスがあるかもしれない。レーティング順で7番手や8番手ということがめずらしくなく、結果もそれなりという香港スプリントにあって、今年のタワーオブロンドンとダノンスマッシュは5番手タイ。しかも、昨年の香港スプリントで上位を占めた地元の実績馬が相次いで引退し、今年の出走馬でG1勝ちがあるのはタワーオブロンドンの1頭しかいない。昨年のダノンスマッシュはレーティング順7番手で結果は8着も、ゲートで後手を踏むなど流れに乗り切れなかった。実力伯仲の両雄が不利なく戦えれば、上位争いに加わっても不思議はない。

日本の2頭と並びレーティング114のウィッシュフルシンカー、これにレーティング112で続き、2着の前哨戦を含む直近の重賞3戦で1番人気の上がり馬コンピューターパッチ、昨年のチェアマンズスプリントプライズ2着で前哨戦3着と復調気配のラタンも差はない。

さらにビッグパーティーやジョリーバナーなど5頭の地元勢が控えているが、他の3レースでは香港マイルの10頭立てが最高なのに対し、フルゲートの14頭が埋まった香港スプリントには層の厚さが表れている。レーティング3番手より下は紙一重と見ておくべきだろう。

(渡部浩明)