少頭数で枠順は不問、焦点はロマンチックウォリアーの4連覇
現地入り後にロードデルレイの回避が決まるなど、今年は7頭立ての少頭数で争われることになった香港カップだが、ロマンチックウォリアーによる前人未到の4連覇なるかという見どころに変化はない。相手も日本勢ら遠征馬に絞られている。
中東遠征からの帰国後に骨折が判明し、影響が心配されていたロマンチックウォリアーだが、復帰戦でもあった地元前哨戦のジョッキークラブカップは逃げる三冠馬ヴォイッジバブルをマークし、残り200mから余力十分に1馬身差をつけて完勝。800m通過に53秒16、1200mには1分18秒50を要す超スローペースで明確な着差をつけた。3着争いのストレートアロンにはさらに2馬身近い差をつけており、チェンチェングローリーともども地元勢に逆転不可能なことは明白だ。
外枠が不利とされるシャティン競馬場の2000m戦だが、7頭立てなら枠順は不問。超スローペースでも楽に突き抜けるロマンチックウォリアーを破るのはやはり容易なことではない。今回の相手関係で逃げるのは4月のG3アレッジドSを逃げ切り、前走のG2バーレーンインターナショナルTでも2着に逃げ粘ったアイルランドのガレンになりそうだが、前走の1000m通過は約64秒の超スローペースだった。
今年の天皇賞(秋)は1000m通過62秒0で稀に見るスローペースだったが、馬場の違いを含んでもガレンの前走とJCカップはなお遅い。それに付き合うよりベラジオオペラが先手を打つか、スピードの違いで先頭に出る展開も予想される。前走でガレンを差し切ったロイヤルチャンピオンは、上がり勝負になったアイリッシュチャンピオンSで3着の末脚自慢。その相手に3/4馬身差のガレンもなかなかの瞬発力を見せており、ベラジオオペラとしては前で主導権を握る方が得策かもしれない。
ロマンチックウォリアーのJ.マクドナルド騎手は香港や豪州で日本馬との対戦経験が豊富にあり、振り返れば常に日本馬を意識したレースをしている。大阪杯連覇の実績からも、今回はベラジオオペラがマークされる立場になるはず。昨年の宝塚記念と有馬記念では長く脚を使って大きな見せ場を作り、2000mなら上位と感じさせるようなスタミナも見せただけに、直線の攻防をしのぎ切れるかに懸かっている。
ロマンチックウォリアーの仕掛けが早くなれば、その後ろから続く形になりそうなローシャムパークに展開が向く。昨年の大阪杯では2番手から抜け出したベラジオオペラのクビ差に詰め寄っており、両雄のリズムがかみ合うことを示している。
喉の手術から復帰した前走のローシャムパークは結果こそ12着も、59.5kgのトップハンデで1着とのタイム差はわずかに0秒4。好位から先頭争いに加わり、残り100mほどで脚勢が鈍ったものの、当時のA.プーシャン騎手が距離の影響を示唆したように、叩き2戦目と距離短縮で変わり身の余地は大きそうだ。2年前の香港Cは初の海外遠征でロマンチックウォリアーの8着に敗れたが、昨年のBCターフではレベルスロマンスをクビ差まで追い詰めて遠征も克服している。
紅一点のキジサナはロマンチックウォリアーに近い位置からになりそう。F.グラファール調教師は王者に対して勝ち目がない旨のコメントをしているが、今年の競馬界で世界をリードしてきた名匠が、フランスから勝算もなく遠征するとは考えにくい。カランダガンを外国馬として20年ぶりのジャパンC制覇に導いた手腕を軽視はできないだろう。
(渡部浩明)