ジャックルマロワ賞はオーナーブリーダーとして成功しただけでなく、フランスギャロの構成母体である馬種改良奨励協会やフランススポーツ協会員、ドーヴィル競馬協会長など要職を歴任したジャック・ル・マロワ伯爵の功績を記念し、フランス最大のレースである凱旋門賞の1年後に当たる1921年（大正10年）に創設。1952年までは3歳限定戦として行われていた。

舞台となるドーヴィル競馬場はノルマンディー上陸作戦で有名なフランス北西部の海岸線に位置するため、第二次世界大戦では戦火の大きな影響を受けた。1940年には中止、1941年から1945年まではメゾンラフィット競馬場とロンシャン競馬場で代替開催され、その中でも唯一のロンシャン開催である1944年は直線ではなく右回りでの施行となった。

フランスのドーヴィル開催は真夏の避暑地で行われる名物開催として定着しており、その中で最高賞金を誇るジャックルマロワ賞は夏場のメインレースという位置づけ。フランスギャロの公式サイトでは“The Milers’ Arc（マイラーの凱旋門賞）”と紹介されている。

それだけに賞金も高く、フランス国内では凱旋門賞、ダービーに次ぎ、オークスとともに3位タイの総額100万ユーロ（約1億6500万円）、1着賞金57万1400ユーロ（約9428万1000円）。この春に賞金総額が大幅に引き上げられた3週後のムーランドロンシャン賞を抑え、マイル戦では最高額となっている。

舞台となるドーヴィル競馬場の直線1600mコースはほぼ平坦のため時計が出やすく、レースレコードは2013年にムーンライトクラウドがマークした1分33秒40。同馬は1300mのG1モーリストゲスト賞を3連覇するなど、スプリント戦でトップクラスのスピードを発揮していた。

なお、外国からの遠征馬は過去103回で計19勝に留まっているが、直近10年では昨年までの7連勝を含む計8勝と地元のフランス勢を圧倒。19勝の内訳はイギリス（13勝）、アイルランド（3勝）、ドイツ（2勝）、そして日本が1勝（1998年タイキシャトル）。日本からは過去に同馬を含む5頭が遠征し、2003年のテレグノシスも3着に好走した。なお、ヴィクトリアマイルの優勝馬と安田記念の1～3着馬には、優先出走権と登録料免除、輸送費補助の特典が用意されている。

最多勝利調教師は1987年と1988年に連覇したミエスクなどのF.ブータンと2017年アルヴケールなどのA.ファーブルが7勝で最多タイ。最多勝利騎手は7勝のL.デットーリが単独トップで、これに6勝のF.ヘッドが続く。