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【キングジョージ現地レポート】女王エネイブルを取り巻く調教師たちの思惑は!?

2019年07月26日 13:45

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 シュヴァルグランの挑戦に立ちはだかるべく待ち受ける地元勢の現状を今回はレポートしよう。

 まずは現在2連勝中のデフォー(セン5歳、R.ヴェリアン厩舎)。昨シーズンが終わった後、去勢されると、今年2回、叩いた後、コロネーションカップ(G1、芝2410m)で差し切りを決めてG1初制覇。続くハードウィックステークス(G2、芝2390m)では昨年の英国ダービー馬マサーらを退けて重賞連勝を飾った。

 「去勢して体質が強化され、実力を発揮出来るようになりました。前走後も良い状態を維持しています。エネイブルら強敵が揃いますが、よいレースをして欲しいです」

 ヴェリアン調教師はそう語る。キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークスとは相性の良いハードウィックS勝ち馬だけに、一発の期待は充分だ。

現在2連勝中で好調のデフォーと同馬を管理するヴェリアン調教師。(Photo by Satoshi Hiramatsu)

 もっとも、このデフォーをしても乗り越えなければいけない壁はエネイブルだけではない。

 クリスタルオーシャン(牡5歳、M.スタウト厩舎)の充実ぶりも目が離せない。

 前走のプリンスオブウェールズステークス(G1、芝1990m)で初のG1勝ち。とはいえ英チャンピオンステークス(G1)2着や昨年のこのレースでも2着となるなど、今までもG1戦線で大崩れする事無く走っていた。

前走でG1初制覇を成し遂げたクリスタルオーシャン。(Photo by Satoshi Hiramatsu)

 対エネイブルは昨年のセプテンバーステークス(G3)で敗れているといえ、それはポリトラックでの話。キングジョージを過去に6勝もしているスタウト調教師は次のように言う。

 「セプテンバーSはポリトラックだったし、斤量差もあった(エネイブルより8ポンド=約3.6kgも重かった)ので参考外。まだ勝負付けが済んだとは考えていませんよ」

自信を見せるスタウト調教師。(Photo by Satoshi Hiramatsu)

 鞍上は前走のL.デットーリ騎手がエネイブルに騎乗するためJ.ドイル騎手となる。レースでコンビを組むのはこれが初めてという事で、19日の金曜日に調教で跨った。同騎手はその時の感触について次のように語る。

 「追い切りではなく軽いキャンターでウォーレンヒルを上っただけですが、乗り易く、感触も良かったし、状態の良さも感じました」

 最後は、エネイブル逆転の最有力に挙げられるのも納得という笑みを見せた。

レースではクリスタルオーシャンに初騎乗となるドイル騎手。(Photo by Satoshi Hiramatsu)

 しかし、女王エネイブル(牝5歳、J.ゴスデン厩舎)にぬかりはないと思わせる言葉が、指揮官の口から出る。

 「ロイヤルアスコットで使おうとしていたくらいだったので、前走も良い仕上がりでした。そして、そこを叩かれた事で更に良くなっている感じがあります」

 ゴスデン調教師は更に続けて言う。

優勝候補筆頭のエネイブル。(Photo by Satoshi Hiramatsu)

 「中間、フランキー(デットーリ騎手)に乗ってもらったところ、彼も『更に良い状態になっている』と言ってくれました。この後はヨークの英インターナショナルステークスにするのか、直接、3連覇のかかる凱旋門賞にするかまだ正式に決めてはいませんが、まずはこのキングジョージに全力で挑ませます」

 大外になった枠順に関しては「このくらいの強いレベルの馬になると気にした事はない」と一笑に付した。終わってみれば絶対女王が君臨となっても何らおかしくはなさそうだ。

取材・文:平松さとし