03/17 13:15
ダーレーが豪州の種牡馬ロースターを増強、ガイヤースやピナトゥボをシャトル派遣
プロフィール
名馬がデビュー前から期待されていたという逸話はめずらしくない。しかし、デビューすること自体が難しい競走馬の世界にあって、サクセスストーリーは実のところ氷山の一角でしかない。ガイヤースはUAEドバイのモハメド殿下が率いる生産組織のダーレー、オーナー組織のゴドルフィンにおいて最上級の評価を受ける1頭だった。
ガイヤースの祖父ドバイミレニアムはわずか1世代を残して早世し、その希少な血をつなぐ父ドバウィともどもゴドルフィンとダーレーの所有で成功。母ナイタイムも愛1000ギニー馬で、目黒記念などを勝って種牡馬入りしたキングオブコージ、仏G3クレオパトル賞勝ちのディープインパクト産駒ハラジュクはガイヤースの従弟妹にあたる。2015年11月に愛ゴフス社の当歳セールに上場された良血馬は、ゴドルフィンの関係者が同世代で欧州最高額となる110万ユーロで落札。言わずもがな、価格には期待料が含まれている。
その投資に対し、ガイヤースがデビューする4か月前には3歳上の半姉ジューコワがアメリカでG1勝ちの吉報をもたらす。ガイヤース自身は2017年9月の初陣こそ落としたものの、2戦目で勝ち上がると3戦目のG3英オータムSをレースレコードで快勝。C.アップルビー調教師はレース直後から10ハロンや12ハロン向きと評し、翌春は英ダービー前哨戦から始動する考えを明かしていた。
しかし、初戦のダンテSを目前に脚元を痛めると、そのまま状態が安定せずにダービーともども断念せざるを得なくなった。復帰は9月まで遅れ、フランスで11か月ぶりの実戦を快勝したものの、3歳は1戦しかできずに終わる。4歳初戦は再びフランスでG2アルクール賞も快勝したが、ダービーから1年遅れでG1初挑戦にこぎつけたガネー賞では、1番人気に推されるも勝ち馬のヴァルトガイストに4馬身余り離されて完敗した。
それでも、ガイヤースに対するアップルビー師の信頼は揺るがず、ガネー賞の敗因を距離や馬場状態に求めて次戦から12ハロン(2400m)に延長することを明言。4か月後のバーデン大賞で実行に移すと、ガイヤースも2着に14馬身差をつける圧勝劇でG1初制覇を飾り、1か月後の凱旋門賞に向けて脚光を浴びた。そして、これが史上初の3連覇を狙うエネイブルの夢を砕く伏線となる。
迎えた凱旋門賞は例年以上に悪化した馬場状態での戦いとなったが、ガイヤースは型通りの逃げで緩みなく飛ばした。直前でG1圧勝の上がり馬に楽をさせられないエネイブルは早めに追撃するも最後に力尽き、後方でスタミナを温存したヴァルトガイストに差し切られて2着。直線早々に捕まったガイヤースは生涯最悪の10着に沈み、一線級との実力差を思い知らされる結果となった。
4歳最終戦で一敗地に塗れたガイヤースだが、この経験が糧となり5歳で大きく飛躍する。越冬地のドバイで2月に始動すると、祖父の名を冠したG3ドバイミレニアムSを圧勝。目標のドバイシーマクラシックはコロナ禍で開催中止となるも、英国に戻ってニューマーケット競馬場での代替開催となったコロネーションCで仕切り直し、前年の英ダービー馬アンソニーヴァンダイクや長距離王ストラディバリウスを寄せつけずにトラックレコードで快勝する。
そして、1か月後のエクリプスSでは2馬身余りの差をつけてエネイブルとの再戦に勝利。7月に発表されたワールドベストレースホースランキングで首位に躍り出た。続く英インターナショナルSでもマジカルに3馬身差と、凱旋門賞で自身を追い抜いていった強豪たちに相次いで雪辱する。G1レース3勝を含む4連勝は全て逃げ切りによる完勝劇だった。
しかし、次戦のアイリッシュチャンピオンSではマジカルの徹底マークを受けて3/4馬身差の2着。アップルビー師も完敗を認める結果に終わると、BCターフを目指して調整中に筋肉痛に見舞われ、ダーレーがアイルランドに所有するキルダンガン・スタッドで、祖父の貴重な血を繋ぐ後継者としての仕事についた。引退発表の1か月後にはカルティエ賞の年度代表馬と最優秀古馬を受賞。2020年ワールドベストホースランキング首位の座も守り抜いた。
開催日 | 場所 | レース名 | 動画 | 着順 | 騎手 | トラック | 距離 | 馬場状態 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2020/09/12 | レパーズタウン | アイリッシュチャンピオンステークス(G1) | 2 | W.ビュイック | 芝 | 2000 | 良 | |
2020/08/19 | ヨーク | 英インターナショナルステークス(G1) | 1 | W.ビュイック | 芝 | 2050 | 良 | |
2020/07/05 | サンダウン | エクリプスステークス(G1) | 1 | W.ビュイック | 芝 | 1990 | 良 | |
2020/06/05 | ニューマーケット | コロネーションカップ(G1) | 1 | W.ビュイック | 芝 | 2400 | 良 | |
2020/02/20 | メイダン | ドバイミレニアムステークス(G3) | 1 | W.ビュイック | 芝 | 2000 | 良 | |
2019/10/06 | パリロンシャン | 凱旋門賞(G1) | 10 | W.ビュイック | 芝 | 2400 | 重 | |
2019/09/01 | バーデンバーデン | バーデン大賞(G1) | 1 | W.ビュイック | 芝 | 2400 | 良 | |
2019/04/28 | パリロンシャン | ガネー賞(G1) | 3 | W.ビュイック | 芝 | 2100 | 稍重 | |
2019/04/07 | パリロンシャン | アルクール賞(G2) | 1 | W.ビュイック | 芝 | 2000 | 良 | |
2018/09/22 | パリロンシャン | プランスドランジュ賞(G3) | 1 | W.ビュイック | 芝 | 2000 | 稍重 | |
2017/10/14 | ニューマーケット | 英オータムステークス(G3) | 1 | W.ビュイック | 芝 | 1600 | 良 | |
2017/09/28 | ニューマーケット | 未勝利戦 | 1 | J.ドイル | 芝 | 1600 | 稍重 | |
2017/09/15 | ドンカスター | 未勝利戦 | 3 | J.ドイル | 芝 | 1600 | 稍重 |
距離 | 1着 | 2着 | 3着 | 4着以下 | 出走回数 | 勝率 | 連対率 | 3着内率 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
~1400m | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0% | 0% | 0% |
1401m~1800m | 2 | 0 | 1 | 0 | 3 | 67% | 67% | 100% |
1801m~2100m | 5 | 1 | 1 | 0 | 7 | 71% | 86% | 100% |
2101m~ | 2 | 0 | 0 | 1 | 3 | 67% | 67% | 67% |
馬場状態 | 1着 | 2着 | 3着 | 4着以下 | 出走回数 | 勝率 | 連対率 | 3着内率 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
良馬場 | 7 | 1 | 0 | 0 | 8 | 88% | 100% | 100% |
稍重馬場 | 2 | 0 | 2 | 0 | 4 | 50% | 50% | 100% |
重馬場 | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 | 0% | 0% | 0% |
不良馬場 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0% | 0% | 0% |