ハクチカラが日本調教馬として初の海外遠征を敢行した1958年当時は、まだ人間の渡航さえ難しい時代。それでも17戦に及ぶ長期滞在によりワシントンバースデーHで記念すべき1勝を挙げ、欧州遠征のフジノオーも史上唯一の障害戦勝利を飾るなど黎明期は健闘していた。しかし、その後はスピードシンボリやタケシバオーらの最強馬が欧米に遠征を繰り返すも連敗。1981年には「世界に通用する強い馬作り」を期してジャパンCが創設された。無敗の三冠馬シンボリルドルフは1985年にジャパンCを制す一方、故障もありアメリカ遠征で結果を出せなかったが、日本調教馬はフジヤマケンザンが1995年に香港国際Cを制し、約30年ぶりに海外勝利を記録。世界への想いは芽を吹き、実を結びはじめる。

転機が訪れたのは1998年。日本調教馬はフランスを舞台に次々と成果を挙げていく。その先陣を切ったのがシーキングザパールで、マイル路線から古馬になってスプリント路線へ転換を図ると、モーリスドゲスト賞で初の海外G1制覇の快挙を達成。その1週後にタイキシャトルもマイル戦のジャックルマロワ賞を勝ち、世界の壁を一気に突き破った。翌年にはエルコンドルパサーが凱旋門賞制覇を目指して現地に長期滞在し、サンクルー大賞で2400mのG1勝ちを成し遂げる。凱旋門賞では半馬身差の2着に惜敗したが、それまで遠い夢と思われていた大レースを現実的な目標に変える大きな功績を残した。