【世界の騎手紹介 Vol.15】パット・スマレン
2018年10月17日 15:00
アイルランドのチャンピオンジョッキーに9度も輝いた名手。2018年3月に膵臓にガンが見つかり、その治療のために休養入り。2019年5月の時点では定期的な検査に通えばいいという状況にまで回復し、本人も現役復帰を希望していたが、治療中に6kgほど増えた体重を元に戻すことは、免疫機能を低下させるおそれがあるという医師のアドバイスを受け、自身の体、そして家族のことを第一に考えて、2019年5月7日に引退を発表した。
パット・スマレン騎手はアイルランド出身。1977年5月22日に生まれ、乗馬をしていた兄に連れられて地元のポニークラブに出かけたことがきっかけとなり、騎手を志した。
やがてT.レイシー厩舎で見習い騎手となり、1993年6月にアイルランドで初勝利。1995年と1996年には同国の見習い騎手チャンピオンに輝いた。その後、1997年にはT.スタック調教師(英障害首位騎手。名障害馬レッドラムでグランドナショナルにも勝つ)の主戦となり、同調教師が管理するタラスコンでG1モイグレアスタッドステークスに勝って、G1初制覇を果たした。また、この頃から冬場にはドバイに渡って、腕を磨いた。
1999年にはM.キネーン騎手に替わって、アイルランドを代表するトレーナーのひとりであるD.ウェルド厩舎の主戦に抜擢。2000年にはアイルランドのチャンピオンジョッキーに初めて輝いた(以降、2001、2005、2007、2008、2010、2014、2015、2016年にも獲得)。
その後もヴィニーローで2001年から2004年にかけてG1愛セントレジャーを4連覇したほか、2003年にはリフューズトゥベンドでG1英2000ギニー、2004年にはグレイスワローでG1愛ダービーを制すなど次々にビッグレースを制覇。2012年から3年間はG1勝ちのない時期もあったが、2015年はフリーイーグルでG1プリンスオブウェールズステークス、ファッシネイティングロックでG1英チャンピオンステークス、コヴァートラヴでG1愛オークス、2016年にはハーザンドでG1英ダービーとG1愛ダービーを制すなど大一番でさすがの勝負強さを発揮。日本でも2013年のゴールデンホイップトロフィーをオースミナインで優勝した。夫人であるフランシスはA.オブライエン調教師の義妹。
近年のG1勝ち
2016年:
愛ダービー(アイルランド):ハーザンド
英ダービー(イギリス):ハーザンド
タタソールズゴールドC(アイルランド):ファッシネイティングロック
文:秋山 響(TPC)