凱旋門賞2021/10/3(日) 23:05発走 パリロンシャン競馬場

日本馬挑戦の歴史JAPANESE HISTORY

日本調教馬の初挑戦から約半世紀

日本調教馬による凱旋門賞挑戦は、開催地のフランスをはじめ欧州各国にも宿願として認知され、日本に才能豊かな馬が現れるたびに次の挑戦者と注目を集めるようになっている。しかし、そうした理解と反比例するかのように、近年の日本調教馬は芳しい結果を残せていない。日本調教馬は2016年から昨年まで途切れることなく計8頭がチャレンジしてきたものの、そのうち6頭は10着以下に大敗。キセキ(2019年)の7着が最高と苦戦が続いており、今年のクロノジェネシスとディープボンドには現状を打破する快走に期待が集まる。

日本調教馬が初めて凱旋門賞に挑戦したのは50年余りも昔。4歳春(旧年齢表記では5歳春)の天皇賞でG1初制覇を飾り、その秋にはアメリカ遠征を敢行するなど、当時としては貴重な経験を積んでいたスピードシンボリが1969年に6歳を迎えて欧州へ渡った。現地に滞在してキングジョージ6世&クイーンエリザベスSとドーヴィル大賞を連戦。入念な準備を経て凱旋門賞に臨んだが世界の強豪たちの前に着外に敗れた。帰国初戦の有馬記念から翌年の宝塚記念、そして有馬記念とグランプリ3連勝を飾る現役最強馬のスピードシンボリが太刀打ちできないほど本場との実力差は大きく、1972年に挑戦した天皇賞馬メジロムサシも厚い壁に跳ね返されている。

3頭目の挑戦までには14年の月日が開いた。1985年の日本ダービーを制したシリウスシンボリが約2年にもわたる長期遠征を敢行。キングジョージを皮切りにドイツやイタリアなど欧州各国を転戦し、1986年の秋にフォワ賞2着から凱旋門賞へ駒を進めた。しかし、英愛ダービー馬シャーラスタニ、仏ダービー馬ベーリング、独ダービー馬アカテナンゴなど各国のダービー馬が顔をそろえた超ハイレベルの一戦で、史上最高レーティング(当時)を獲得することになるダンシングブレーヴに豪脚を見せつけられて14着に沈んだ。

21世紀へエルコンドルパサーの飛翔

スピードシンボリの初挑戦から30年後の1999年、シリウスシンボリの参戦から13年と久しく遠ざかっていた凱旋門賞挑戦にエルコンドルパサーが名乗りを挙げた。そして、この13年の間に日本調教馬と欧州の強豪との差が急激に縮まっていたことが明らかになる。先駆者たちと同様に長期滞在を選択したエルコンドルパサーは、前年の凱旋門賞馬サガミックス、カルティエ賞年度代表馬ドリームウェルを相手にサンクルー大賞を制すなど歴史的成果をあげ、凱旋門賞に優勝候補の1頭として参戦した。レースでは不良馬場の中で敢然と逃げを打ち、その年の愛仏ダービー馬モンジューに差されて1/2馬身差の2着に惜敗したものの、優勝へあと一歩と迫る激走で日本の競馬界に大きな希望をもたらした。

エルコンドルパサーの快挙によって弾みがつき、21世紀に入ってからは日本調教馬の凱旋門賞チャレンジがコンスタントに続くことになった。2002年のマンハッタンカフェはレース後に屈腱炎を発症、2004年のタップダンスシチーは輸送トラブルと不運が重なり大敗に終わったものの、2006年には前年に無敗のクラシック三冠を成し遂げたディープインパクトが遠征。史上最強の呼び声もかかる切り札の参戦により、日本調教馬の挑戦は大きな山場を迎えることになる。ところが、日本では豪快な差し脚で無敵を誇るディープインパクトが、凱旋門賞では2頭に差し込まれるというまさかの形で完敗。レース後には呼吸器系治療薬の使用規定に関する違反で失格の裁定が下る失意の結果に終わった。

失意の中で現れたゲームチェンジャー

ディープインパクトでも叶えられないのであればもはや──日本調教馬による凱旋門賞制覇の道筋は袋小路に迷い込んだかに思われた。しかし、2010年になってナカヤマフェスタが突破口をこじ開ける。G1実績は宝塚記念の1勝しかなく、エルコンドルパサーやディープインパクトに及ばないものだったが、英ダービー馬ワークフォースと激闘を演じた末にアタマ差の2着。エルコンドルパサーの1/2馬身差からさらに勝利に近づき、適性ひとつで勝機があることを改めて認識させた。

そして2年後の2012年、ディープインパクト以来の三冠馬で、ナカヤマフェスタと同じステイゴールド産駒という、実績と適性の双方から期待値の高いオルフェーヴルが渡仏した。前哨戦のフォワ賞を完勝し、万全の態勢を整えて上がった桧舞台では後方から大外を豪快に突き抜けて先頭。誰もが勝利を確信する形勢に持ち込んだ。ところが、あとわずかという所で目を疑うような急失速。手にしたはずの栄冠を、一度は並ぶ間もなく抜き去ったソレミアに差し出してしまった。

翌年はオルフェーヴルにダービー馬キズナも加わり最強の布陣で臨んだ。しかし、その前に3歳牝馬トレヴが立ちはだかり、オルフェーヴルは一度も先頭に立てないまま2着、キズナも4着に完敗。トレヴは2014年も世界ランキング1位のジャスタウェイ、この時点でG1レース5勝のゴールドシップらを一蹴して36年ぶりの連覇を達成する。2013年と2014年に遠征した日本調教馬には歴代でも屈指の精鋭たちが含まれていたが、稀代の名牝が待ち受ける不運に泣かされ、その後も失った流れを取り戻せずにいる。

馬名 性齢 着順 騎手 調教師
2020 ディアドラ 牝6 8 J.スペンサー 橋田満
2019 キセキ 牡5 7 C.スミヨン 角居勝彦
ブラストワンピース 牡4 11 川田将雅 大竹正博
フィエールマン 牡4 12 C.ルメール 手塚貴久
2018 クリンチャー 牡4 17 武豊 宮本博
2017 サトノダイヤモンド 牡4 15 C.ルメール 池江泰寿
サトノノブレス 牡7 16 川田将雅 池江泰寿
2016 マカヒキ 牡3 14 C.ルメール 友道康夫
2014 ハープスター 牝3 6 川田将雅 松田博資
ジャスタウェイ 牡5 8 福永祐一 須貝尚介
ゴールドシップ 牡5 14 横山典弘 須貝尚介
2013 オルフェーヴル 牡5 2 C.スミヨン 池江泰寿
キズナ 牡3 4 武豊 佐々木晶三
2012 オルフェーヴル 牡4 2 C.スミヨン 池江泰寿
アヴェンティーノ 牡8 17 A.クラストゥス 池江泰寿
2011 ヒルノダムール 牡4 10 藤田伸二 昆貢
ナカヤマフェスタ 牡5 11 蛯名正義 二ノ宮敬宇
2010 ナカヤマフェスタ 牡4 2 蛯名正義 二ノ宮敬宇
ヴィクトワールピサ 牡3 7 武豊 角居勝彦
2008 メイショウサムソン 牡5 10 武豊 高橋成忠
2006 ディープインパクト 牡4 失格 武豊 池江泰郎
2004 タップダンスシチー 牡7 17 佐藤哲三 佐々木晶三
2002 マンハッタンカフェ 牡4 13 蛯名正義 小島太
1999 エルコンドルパサー 牡4 2 蛯名正義 二ノ宮敬宇
1986 シリウスシンボリ 牡4 14 M.フィリッペロン 二本柳俊夫
1972 メジロムサシ 牡5 18 野平祐二 大久保末吉
1969 スピードシンボリ 牡6 着外 野平祐二 野平省三