最近10年は地元の香港勢を上回る成果、日本調教馬の躍進続く
香港国際競走で最も歴史があり、礎ともいうべきレースの香港Cに、ナリタチカラが日本調教馬として初参戦した1993年から30年。この期間を10年ずつに三分割すると、中盤の低迷期からV字を描いて今日に至った歴史が見える。
日本調教馬は初参戦から2年後、G2として行われていた1995年にフジヤマケンザンが早くも初制覇を飾り、3年後の1998年にミッドナイトベットも2勝目を手にする。香港Cが1999年にG1昇格を果たすと、2001年にはアグネスデジタルが優勝。現在のように海外遠征が盛んではなく、ノウハウも乏しかった時代に3年間隔で勝利を重ねるなど、着実かつ順調に成果を上げていた。
しかし、香港CがG1レースとして地位を固めるにつれてレベルも向上し、同じ調教国の連覇がない群雄割拠の時代に突入。防戦一方の地元勢も2011年から4連覇するなど着実に底上げを果たした。これに対して日本調教馬はアドマイヤムーン(2006年)の2着が1回あるだけで、2010年以降は遠征も途絶えてしまうなど、中盤の約10年間は一転して苦戦を強いられるようになった。
こうした中で2013年にトウケイヘイローが4年ぶりに参戦し、2着に善戦して反撃の狼煙を上げる。2年後の2015年にはエイシンヒカリが序盤から飛ばしていく攻撃的なスタイルを貫き、レースレコードを叩き出す鮮やかな逃げ切りで14年ぶりの勝利を日本にもたらす。2着にはヌーヴォレコルトが続き、日本勢初のワンツーフィニッシュを決めると、続く2016年もモーリスが強烈な末脚で3馬身突き抜ける圧巻の勝利。今度は日本勢初の連覇を達成して停滞ムードは一掃された。
2017年と2018年は香港勢に反撃を許したものの、それぞれネオリアリズムが3着(2017年)、ディアドラは2着(2018年)に善戦。2019年にはウインブライトが短アタマ差の接戦を制して同年4月のクイーンエリザベス2世Cとのダブル制覇を達成するなど、日本調教馬の存在感は年を追うごとに増していった。
そして、2020年はノームコアが日本の牝馬として初制覇。前年の覇者で2着のウインブライトとともに、2015年以来となる2度目のワンツーフィニッシュを決めた。続く2021年もラヴズオンリーユーが1番人気に応えて日本勢の3連覇とするとともに、2着のヒシイグアスと3度目のワンツーを達成。2022年もダノンザキッドが2着を確保し、日本調教馬は2013年以降の10年間で5勝、2着6回を記録して地元の香港勢と互角以上に渡り合っている。
年 | 馬名 | 性齢 | 着順 | 騎手 | 調教師 |
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2022 | ダノンザキッド | 牡4 | 2 | 北村友一 | 安田隆行 |
ジオグリフ | 牡3 | 6 | W.ビュイック | 木村哲也 | |
ジャックドール | 牡4 | 7 | 武豊 | 藤岡健一 | |
レイパパレ | 牝5 | 9 | J.モレイラ | 高野友和 | |
パンサラッサ | 牡5 | 10 | 吉田豊 | 矢作芳人 | |
2021 | ラヴズオンリーユー | 牝5 | 1 | 川田将雅 | 矢作芳人 |
ヒシイグアス | 牡5 | 2 | J.モレイラ | 堀宣行 | |
レイパパレ | 牝4 | 6 | C.スミヨン | 高野友和 | |
2020 | ノームコア | 牝5 | 1 | Z.パートン | 萩原清 |
ウインブライト | 牡6 | 2 | 松岡正海 | 畠山吉宏 | |
ダノンプレミアム | 牡5 | 4 | W.ビュイック | 中内田充正 | |
2019 | ウインブライト | 牡5 | 1 | 松岡正海 | 畠山吉宏 |
2018 | ディアドラ | 牝4 | 2 | C.ルメール | 橋田満 |
サングレーザー | 牡4 | 4 | J.モレイラ | 浅見秀一 | |
ステファノス | 牡7 | 9 | W.ビュイック | 藤原英昭 | |
2017 | ネオリアリズム | 牡6 | 3 | J.モレイラ | 堀宣行 |
ステファノス | 牡6 | 4 | H.ボウマン | 藤原英昭 | |
スマートレイアー | 牝7 | 5 | 武豊 | 大久保龍志 | |
2016 | モーリス | 牡5 | 1 | R.ムーア | 堀宣行 |
ステファノス | 牡5 | 3 | C.スミヨン | 藤原英昭 | |
ラブリーデイ | 牡6 | 4 | H.ボウマン | 池江泰寿 | |
クイーンズリング | 牝4 | 9 | M.デムーロ | 吉村圭司 | |
エイシンヒカリ | 牡5 | 10 | 武豊 | 坂口正則 | |
2015 | エイシンヒカリ | 牡4 | 1 | 武豊 | 坂口正則 |
ヌーヴォレコルト | 牝4 | 2 | R.ムーア | 斎藤誠 | |
ステファノス | 牡4 | 10 | 戸崎圭太 | 藤原英昭 | |
サトノアラジン | 牡4 | 11 | J.マクドナルド | 池江泰寿 | |
2014 | アルキメデス | 牡5 | 7 | 岩田康誠 | 藤原英昭 |
2013 | トウケイヘイロー | 牡4 | 2 | 武豊 | 清水久詞 |
2009 | クィーンスプマンテ | 牝5 | 10 | 田中博康 | 小島茂之 |
2007 | シャドウゲイト | 牡5 | 5 | 田中勝春 | 加藤征弘 |
2006 | アドマイヤムーン | 牡3 | 2 | 武豊 | 松田博資 |
ディアデラノビア | 牝4 | 7 | 福永祐一 | 角居勝彦 | |
2004 | ダンスインザムード | 牝3 | 13 | O.ペリエ | 藤沢和雄 |
2003 | エイシンプレストン | 牡6 | 7 | 福永祐一 | 北橋修二 |
マグナーテン | セ7 | 13 | K.デザーモ | 藤沢和雄 | |
2002 | エイシンプレストン | 牡5 | 5 | 福永祐一 | 北橋修二 |
2001 | アグネスデジタル | 牡4 | 1 | 四位洋文 | 白井寿昭 |
1999 | エアジハード | 牡4 | 取消 | 伊藤正徳 | |
1998 | ミッドナイトベット | 牡4 | 1 | 河内洋 | 長浜博之 |
1997 | サイレンススズカ | 牡3 | 5 | 武豊 | 橋田満 |
1996 | シーズグレイス | 牝3 | 9 | 福永祐一 | 森秀行 |
1995 | フジヤマケンザン | 牡7 | 1 | 蛯名正義 | 森秀行 |
1994 | フジヤマケンザン | 牡6 | 4 | 蛯名正義 | 森秀行 |
1993 | ナリタチカラ | 牡5 | 7 | 武豊 | 大久保正陽 |