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スノーフォール半弟デビュー2連勝ならず、伏兵たちに敗れて大波乱呼ぶ
プロフィール
ディープインパクト産駒のサクソンウォリアーが英2000ギニーを制す2018年5月の3か月前、同じ父親と凱旋門賞馬ファウンドの全妹を母親に持つ牝馬が日本で誕生した。後にスノーフォールと名づけられた良血馬は、英オークスで記録的大勝を飾るなど愛オークス、ヨークシャーオークスと3連勝。日本が誇る三冠馬の名声を一段と高めた。
2歳時のスノーフォールはデビュー3戦目の7月に未勝利を脱出しただけで7戦1勝。初勝利後は重賞4戦で4着が最高という、血筋に比して期待はずれの成績しか残せなかった。通常ならひっそりとシーズンを終えるところだが、最終戦のG1フィリーズマイルでは僚馬マザーアースと取り違えられたまま完走。3位入線したはずのスノーフォールが実は8位入線で、後に両馬の着順も訂正される珍事に巻き込まれてスポットライトを浴びた。
自力で名前を売ったとは言い難いスノーフォールだが、明け3歳を迎えると驚くほどの変わり身で実を伴わせていく。英オークス路線を選択したスノーフォールは前哨戦のミュージドラSで始動。下馬評はともにG1ホースを母に持つヌーンスターとティオーナが単勝2倍台の一騎打ちで、スノーフォールは15倍と離された4番人気ながら、両馬を寄せつけずに逃げ切って重賞初制覇を飾った。それまでの1マイル以下から10ハロンを超える距離できっかけをつかむと、さらに距離が延びる本番で衝撃的な走りを披露する。
前哨戦で名を上げたスノーフォールは英オークスで3番人気へと評価を高めていた。雨に煙るコンディションで争われたレースでは、緩みない流れに乗って中団の後ろに待機。直線に向かい各馬が馬場の外へ進路を取ると、スノーフォールは馬群の間から抜け出して先頭を捕らえる。そして、外ラチに寄せてスパートするや一方的にリードを広げていき、最後は流す余裕で16馬身もの大差を開いてしまった。
243回の長い歴史を誇るレースでの着差記録となる圧勝劇は、英クラシック通算20勝以上を誇る名手、L.デットーリをして「熱いナイフでバターを切ったよう」「これほど楽にクラシックを勝ったことはない」と言わしめるほどだった。
歴史的大勝を受け、続く愛オークスでは単勝1.3倍と断然の人気。ここでも2着に8馬身半差をつける圧勝で英愛オークスW制覇を成し遂げると、次戦のヨークシャーオークスで古馬との初対戦に臨み、7頭立ての後方2番手からひと鞭も入れられずに4馬身突き抜けてG1レース3連勝を飾る。もはや12ハロン路線で牝馬に敵なしを印象づけ、次なる目標は凱旋門賞制覇へと明確に定まった。
そして、スノーフォールは予行演習を兼ねて同舞台のヴェルメイユ賞に矛先を向けた。当然のように圧倒的人気を集めて勝ち方が焦点となっていたが、ミュージドラSと英オークスで影も踏ませなかったティオーナを捕らえ切れず、まさかの2着に敗れてしまう。当時は瞬発力勝負の展開が敗因とも考えられたが、今となっては英オークスから半減させてきた2着馬との着差に変化の兆しが表れていたのかもしれない。
スノーフォールは予定通りに挑戦した凱旋門賞でも、牡馬の厚い壁に跳ね返されて6着に完敗。牝馬同士の比較では当時の日本最強クラスだったクロノジェネシスに半馬身先着したものの、古馬のタルナワに底力の差を見せつけられている。その2週後には英チャンピオンズフィリーズ&メアズSで再び牝馬同士の12ハロン戦に臨むも、ヨークシャーオークスで蹴散らしたエシャーダに敗れ、夏場の勢いを取り戻せないままシーズンを終えた。5月のミュージドラスSから10月の英チャンピオンズフィリーズ&メアズSまで月1走のローテーションで計7戦。後半の不調はこの連戦による影響もあったのかもしれない。
この年、スノーフォールはカルティエ賞最優秀3歳牝馬を受賞し、あらためて世代最強の牝馬と認められた。しかし、4歳を迎えた年明け早々、クールモアにより突然の悲報が発表される。スノーフォールは引退して繁殖入りするか、4歳も現役続行か、去就未定のまま休暇を過ごしていた馬房内で骨盤を骨折。数週にわたり懸命の治療が施されたものの、それも及ばず未来を失う結果となっていた。夏の欧州に降り注いだ大雪は、冬の深まりとともに空へと帰っていった。
生年 | 2018 |
---|---|
性別 | 牝 |
毛色 | 鹿毛 |
父 | ディープインパクト |
母 | ベストインザワールド |
母父 | Galileo |
調教師 | A.オブライエン |
生産者 | Roncon, Chelston Ire & Wynatt |
馬主 | クールモア |
通算成績 | 14戦5勝[5-1-2-6] |
開催日 | 場所 | レース名 | 動画 | 着順 | 騎手 | トラック | 距離 | 馬場状態 |
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2021/10/16 | アスコット | 英チャンピオンズフィリーズ&メアズステークス(G1) | 3 | R.ムーア | 芝 | 2390 | 稍重 | |
2021/10/03 | パリロンシャン | 凱旋門賞(G1) | 6 | R.ムーア | 芝 | 2400 | 重 | |
2021/09/12 | パリロンシャン | ヴェルメイユ賞(G1) | 2 | L.デットーリ | 芝 | 2400 | 良 | |
2021/08/19 | ヨーク | ヨークシャーオークス(G1) | 1 | R.ムーア | 芝 | 2370 | 良 | |
2021/07/17 | カラ | 愛オークス(G1) | 1 | R.ムーア | 芝 | 2400 | 良 | |
2021/06/04 | エプソム | 英オークス(G1) | 1 | L.デットーリ | 芝 | 2410 | 稍重 | |
2021/05/12 | ヨーク | ミュージドラステークス(G3) | 1 | R.ムーア | 芝 | 2050 | 稍重 | |
2020/11/06 | キーンランド | ブリーダーズカップジュベナイルフィリーズターフ(G1) | 取消 | P.ブドー | 芝 | 1600 | 稍重 | |
2020/10/09 | ニューマーケット | フィリーズマイル(G1) | 8 | W.ビュイック | 芝 | 1600 | 重 | |
2020/09/13 | カラ | モイグレアスタッドステークス(G1) | 9 | W.ローダン | 芝 | 1400 | 良 | |
2020/08/22 | カラ | デビュタントステークス(G2) | 5 | W.ローダン | 芝 | 1400 | 重 | |
2020/08/06 | レパーズタウン | シルバーフラッシュステークス(G3) | 4 | W.ローダン | 芝 | 1400 | 良 | |
2020/07/19 | カラ | 未勝利戦 | 1 | W.ローダン | 芝 | 1400 | 稍重 | |
2020/06/28 | カラ | 未勝利戦 | 8 | S.ヘファナン | 芝 | 1400 | 稍重 | |
2020/06/10 | ナヴァン | 未勝利戦 | 3 | S.ヘファナン | 芝 | 1150 | 良 |
距離 | 1着 | 2着 | 3着 | 4着以下 | 出走回数 | 勝率 | 連対率 | 3着内率 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
~1400m | 1 | 0 | 1 | 4 | 6 | 17% | 17% | 33% |
1401m~1800m | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 | 0% | 0% | 0% |
1801m~2100m | 1 | 0 | 0 | 0 | 1 | 100% | 100% | 100% |
2101m~ | 3 | 1 | 1 | 1 | 6 | 50% | 67% | 83% |
馬場状態 | 1着 | 2着 | 3着 | 4着以下 | 出走回数 | 勝率 | 連対率 | 3着内率 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
良馬場 | 2 | 1 | 1 | 2 | 6 | 33% | 50% | 67% |
稍重馬場 | 3 | 0 | 1 | 1 | 5 | 60% | 60% | 80% |
重馬場 | 0 | 0 | 0 | 3 | 3 | 0% | 0% | 0% |
不良馬場 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0% | 0% | 0% |