ドバイワールドカップ

2022/3/27(日) 01:30発走 メイダン競馬場

日本馬挑戦の歴史JAPANESE HISTORY

ヴィクトワールピサが値千金の1勝、日本調教馬は10年周期で連対

日本調教馬は1996年の第1回からドバイWCに遠征し続け、ここまで不参戦だったのはケイティブレイブが現地で出走を取り消した2019年を含めても4回しかない。ダートの本場アメリカ勢や地元UAE勢の壁は厚く、概ね苦戦傾向にあるが、オールウェザー(AW)で開催されていた2011年にはヴィクトワールピサとトランセンドがワンツーフィニッシュを決め、ダートでも2001年のトゥザヴィクトリーと2021年のチュウワウィザードが2着。ちょうど10年周期で優勝争いに絡んできたことになる。

トゥザヴィクトリーが大きな見せ場を作って2着に食い込んだのは創設6年目のことだった。直前のフェブラリーSで3着だったものの、その1回しかダートを体験していない牝馬が、経験豊富な猛者たちをスピードで翻ろう。一時は直線を独走しようかというリードを奪った事実は、関係者やファンに驚きとともに勇気を与えた。結果としてアメリカの雄キャプテンスティーヴには完敗だったが、現在もレース史上唯一の牝馬による連対例となって記録に残っている。

この2年前にはエルコンドルパサーが凱旋門賞で惜敗していたこともあり、日本調教馬が世界最高峰の舞台で勝利をつかむ日は遠くないと期待は高まった。しかし、待っていたのは厳しい現実だった。その後は時代を代表するダート王たちが毎年のように遠征しながら、ヴァーミリアン(2007年)の4着が最高(2006年のカネヒキリも繰り上がりで4着)と完敗が続く。

世界の厚い壁に当たっていた日本調教馬だが、意外な形で大きな転機が訪れる。2010年にメイダン競馬場が開場すると、ダートコースに代わりAWコースを採用。パワーよりもスピードを問われる要素が強くなった。その翌年、皐月賞と有馬記念で芝G1を2勝の実績馬ヴィクトワールピサが遠征すると、日本競馬史に燦然と輝く金字塔を打ち立てる。

芝の名牝ブエナビスタ、ダート王トランセンドとともに参戦したヴィクトワールピサは、向正面でスローペースの間隙を突き最後方から一気に進出。従来のダートでは不可能な戦術で先頭のトランセンドに並び、そのまま直線に突入して2頭で叩き合うと、翌年のドバイWCを勝つことになるモンテロッソらの追撃を振り切ってワンツーフィニッシュ。レースの2週前に発生した東日本大震災の被害に打ちひしがれる日本へ大きな感動を届けた。

その後、2015年にAWからダートに戻り、日本調教馬は再び完敗続きの状態に陥ったが、2021年にチュウワウィザードが激走を披露する。この数年前からペガサスWC(アメリカ)、サウジC(サウジアラビア)と、ドバイWCの地位を脅かす超高額賞金レースが相次いで誕生。その影響もありドバイWCはアメリカのG1ホースが不在の相手関係となった。チュウワウィザードは内枠を生かしてラチ沿いの絶好位で流れに乗ると、前方から抜け出したミスティックガイドに追いすがって2着。10年ぶり4頭目の連対を果たした。

馬名 性齢 着順 騎手 調教師
2021 チュウワウィザード 牡6 2 戸崎圭太 大久保龍志
2019 ケイティブレイブ 牡6 取消 J.モレイラ 杉山晴紀
2018 アウォーディー 牡8 6 武豊 松永幹夫
2017 アウォーディー 牡7 5 武豊 松永幹夫
ラニ 牡4 8 R.ムーア 松永幹夫
アポロケンタッキー 牡5 9 C.ルメール 山内研二
ゴールドドリーム 牡4 14 J.モレイラ 平田修
2016 ホッコータルマエ 牡7 9 幸英明 西浦勝一
2015 ホッコータルマエ 牡6 5 幸英明 西浦勝一
エピファネイア 牡5 9 C.スミヨン 角居勝彦
2014 ベルシャザール 牡6 11 C.ルメール 松田国英
ホッコータルマエ 牡5 16 幸英明 西浦勝一
2012 エイシンフラッシュ 牡5 6 C.ルメール 藤原英昭
スマートファルコン 牡7 10 武豊 小崎憲
トランセンド 牡6 13 藤田伸二 安田隆行
2011 ヴィクトワールピサ 牡4 1 M.デムーロ 角居勝彦
トランセンド 牡5 2 藤田伸二 安田隆行
ブエナビスタ 牝5 8 R.ムーア 松田博資
2010 レッドディザイア 牝4 11 C.スミヨン 松永幹夫
2009 カジノドライヴ 牡4 8 安藤勝己 藤沢和雄
2008 ヴァーミリアン 牡6 12 武豊 石坂正
2007 ヴァーミリアン 牡5 4 C.ルメール 石坂正
2006 カネヒキリ 牡4 4 武豊 角居勝彦
スターキングマン 牡7 7 O.ペリエ 森秀行
2005 アジュディミツオー 牡4 6 内田博幸 川島正行
2004 アドマイヤドン 牡5 8 安藤勝己 松田博資
リージェントブラフ 牡8 9 吉田豊 大久保洋吉
サイレントディール 牡4 12 武豊 池江泰郎
2002 アグネスデジタル 牡5 6 四位洋文 白井寿昭
トゥザヴィクトリー 牝6 11 O.ペリエ 池江泰郎
2001 トゥザヴィクトリー 牝5 2 武豊 池江泰郎
レギュラーメンバー 牡4 9 松永幹夫 山本正司
2000 ワールドクリーク 牡5 6 加藤和宏 新井仁
1998 キョウトシチー 牡7 6 松永幹夫 中尾謙太郎
1997 ホクトベガ 牝7 中止 横山典弘 中野隆義
1996 ライブリマウント 牡5 6 石橋守 柴田不二男