1857年のロンシャン競馬場開設をきっかけに、フランス馬種奨励改良協会は国際化の推進とともに最高の馬を発掘するためのプロジェクトを構想した。その第一歩として、1863年に仏ダービー馬と英ダービー馬を競わせることを狙いとするパリ大賞を創設。1893年には10月初旬に3歳馬と年長馬が対戦するコンセイユミュニシパル賞（現在のコンセイユドゥパリ賞）を2つ目の国際レースとして追加する。

さらに、第一次世界大戦が終結後の1920年、馬種奨励改良協会は戦時下で衰退した競馬産業の再生を期して新たな企画を打ち出し、コンセイユミュニシパル賞と同距離で、馬齢による斤量差だけの対等な条件で競わせる3つ目のレースを発案。それが凱旋門賞となる。

凱旋門賞というレース名は1882年以来、地味な条件戦で使用されていたが、1919年7月14日に戦勝記念碑でもあるエトワール凱旋門の周辺で、第一次大戦の連合軍が勇壮なパレードを挙行。こうした光景が新しいレースを華々しくアピールしたい協会のイメージ戦略にも合致したことにより、今日まで続く凱旋門賞へとレース名が引き継がれた。

第二次世界大戦中には大きな影響を受け、1939年と1940年は開催中止となる一方、1943年と1944年にはトレンブレー競馬場の2300mで開催。また、ロンシャン競馬場の改修工事に伴って2016年と2017年はシャンティイ競馬場での代替開催となり、新装後はパリロンシャン競馬場へと改名された。2023年からフルゲートを24頭に拡大。前年に登録馬が多く除外馬が出たため、出走頭数が増やされた。

レースは地元のフランス馬が優勢で、2023年までの102回で約7割と他国からの遠征馬を圧倒している。その中でも中心を担ってきたのは3歳の牡馬だが、2005年に仏ダービーの距離が2400mから2100mに短縮されたのを境に、遠征馬や牝馬の優勝が増加するなど傾向に変化が表れた。ただ、2023年のエースインパクトはフランスの3歳牡馬として2006年のレイルリンク、その年の仏ダービー馬としては2005年のハリケーンラン以来となる優勝を飾っており、これから再び傾向が変化する可能性も生じている。

なお、優勝馬の輩出国はフランスの他に英国、アイルランド、ドイツ、イタリアに限られ、欧州域外からは未勝利。2着まで対象を広げても日本のエルコンドルパサー（1999年）とナカヤマフェスタ（2010年）、オルフェーヴル（2012、2013年）、ニュージーランドのバルメリーノ（1977年）の4頭（計5回）しかいない。

日本調教馬は2023年まで31頭が計34戦し、前記3頭による2着が最高。これらの他に5着以内に健闘したのも、2013年のキズナと2023年のスルーセブンシーズの2頭（ともに4着）に留まっている。2006年のディープインパクトは3位入線するも後に失格となった。

連覇はクサール（1921、1922年）とコリーダ（1936、1937年）、タンティエーム（1950、1951年）、リボー（1955、1956年）、アレッジド（1977、1978年）、トレヴ（2013、2014年）、エネイブル（2017、2018年）が達成。これにモトリコ（1930、1932年）を加えた計8頭が2勝しており、3勝以上した馬は存在しない。

人物ではL.デットーリ騎手の6勝、A.ファーブル調教師の8勝がそれぞれ最多。

※2000年以降を記載
※2016年と2017年はシャンティイ競馬場開催